旧澤村邸改修

 

静岡県下田市の旧町内にある築97年の母屋と蔵、駐車場から成る邸宅「旧澤村邸」を観光交流拠点として整備するため、下田市と2010年から始まったプロジェクトである。外観のなまこ壁を保存・修復しながら耐震改修を行い、母屋を休憩所に蔵を展示室に転用し、駐車場に広場と公衆トイレを新設することが求められた。木造2階建ての下田では多く見られるなまこ壁の母屋は、内部から梁と土台、柱に構造用合板で補強を行う一般的な耐震補強により既存の間取りを活かした改修とした。1階が伊豆石造の蔵は、構造性能実験から得られた石自体の摩擦力を活かし最小限の構造補強を行い、伊豆石壁を背景とした伊豆・下田ならではの展示空間を実現した。また、ペリーロードの終着点に計画された公衆トイレは、既存の伊豆石の塀を90度曲げるような形で積み直し広場とのバッファーをつくるとともに、ペリーロードからのアイストップとなるような景観としての建築を目指した。いずれも下田のまちに残る典型的な建築である。今後まち遺産の保存再生を行う上で、「旧澤村邸」が参照される建築となることを願う。

 

主要用途:観光交流施設・展示・公衆トイレ
クレジット:山中新太郎+落合正行/山中新太郎建築設計事務所
構造:有限会社滝一級構造研究室
構造監修:東京大学生産技術研究所腰原研究室
設備:有限会社知久設備計画研究所
施工:株式会社加藤工芸社
所在:静岡県下田市
建築面積:母屋:186.82㎡、蔵:40.87㎡、公衆トイレ:24.09㎡
延床面積:母屋:258.65㎡、蔵:34.41㎡、公衆トイレ:22.50㎡
設計期間:母屋:2009年6月 – 2010年3月、蔵:2010年8月 – 2011年3月、公衆トイレ:2011年2月 – 2011年8月
施工期間:母屋:2010年8月 – 2011年3月、蔵:2011年9月 – 2011年12月、公衆トイレ:2011年11月 – 2012年2月
写真:堀田貞雄
掲載:「新建築」2012年9月号